猫に歯周病はある?|猫でよく見られる歯の病気について獣医師がわかりやすく解説
猫の歯石や歯肉の赤みが気になったことはありませんか?
猫の歯に歯石や歯肉の赤みを見つけたら、多くの方は歯周病を疑うかもしれません。
しかし猫では歯周病を単独で発症したという報告はじつは多くありません。
その一方で、歯周病と誤解されやすい猫特有の歯科疾患が非常によく見られます。
この記事では、猫の歯周病とそのほかの猫でよく見られる歯科疾患について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫の歯の健康管理に役立ててください。

猫に歯周病はある?
猫にも歯周病はありますが、じつは猫特有の歯科疾患を伴っていることが多いです。
歯周病は歯垢の中の細菌によって、歯肉や歯を支える骨に炎症が起きる病気です。
歯には歯磨きをしないと歯垢が形成され、やがて歯石が歯に沈着していきます。
歯石の表面には歯垢も新しく形成されやすく、さらに細菌が繁殖していきます。
このため犬の場合は、歯石が多いほど歯周病も重度であることが多いです。
しかし猫では歯石の沈着がそもそも少なく、歯周病が単独で発症することは珍しいです。
じつは猫では歯石が少なくても、重度の歯肉炎を起こすこともあります。
このため猫の場合は歯石が少ないからと言って、歯が健康とは限りません。
猫の歯のトラブルを正しく理解するためには、猫特有の歯科疾患を知ることが重要です。
猫でよく見られる歯科疾患
猫でよく見られる歯科疾患でとくに重要なのは以下の4つです。
- 歯肉口内炎
- 吸収病巣
- 歯槽骨炎
- Mandibular soft tissue trauma(咬合に関連した下顎軟部組織外傷)
これらの疾患は以下のような症状を示すため、歯周病と誤解されやすいです。
- 口臭
- 歯肉の赤み
- よだれ
- 痛み
- 口を前足でかく
それぞれの病気について詳しく解説します。
歯肉口内炎
歯肉口内炎は猫特有の非常に重要な歯科疾患です。
猫の歯肉口内炎は歯に歯石がついていない場合でも、歯肉に強い炎症を起こします。
また進行すると歯肉だけにとどまらず、口の中の粘膜全体に強い炎症が広がります。
とくに口の中でも喉側の粘膜に強い炎症と痛みが起きることが多いです。
猫の歯肉口内炎の原因は細菌やウイルス、免疫反応の異常などが関与していると考えられていますが、明確でない点も多いです。
猫の歯肉口内炎についてはこちらもチェックしてみてください。
猫の歯肉口内炎 (Feline Chronic Gingivitis Stomatitis)について – 福岡犬猫歯科&口腔外科

吸収病巣
吸収病巣は、猫で非常に多く見られる歯の病気です。
猫の吸収病巣は歯の表面が徐々に溶けて、歯の痛みと炎症を起こす病気です。
またこの病気では最終的に歯が溶けて吸収され、崩壊してしまうこともあります。
歯周病とは違い、猫の吸収病巣は歯石に関係なく歯肉に強い炎症を起こすことが多いです。
猫の25~75%で吸収病巣が見られたという報告もあり、発生の多い病気だといえます。
猫の吸収病巣についてはこちらも参考にしてみてください。
猫の吸収病巣(Tooth Resorption)について – 福岡犬猫歯科&口腔外科

歯槽骨炎
歯槽骨炎は歯を支える骨である歯槽骨に炎症や吸収が起こる状態を指します。
猫では慢性的な歯周病や吸収病巣につづいて歯槽骨炎が認められることが多いです。
歯槽骨に炎症が及んで吸収されると歯を固定できなくなり、痛みや炎症を起こします。
歯槽骨炎は単独で診断されることは少なく、歯肉口内炎や吸収病巣の一部として見つかることがほとんどです。
Mandibular soft tissue trauma(咬合に関連した下顎軟部組織外傷)
Mandibular soft tissue traumaは咬み合わせの悪さから下顎の軟部組織が傷つく病気です。
軟部組織とは歯肉や粘膜のことであり、上顎の歯に繰り返し刺激されると炎症が起きます。
Mandibular soft tissue traumaは進行すると歯肉や歯槽骨が吸収され、ひどい場合は肉芽腫というしこりができます。
この病気はとくに上顎の第四前臼歯(一番大きな奥歯)が当たる部分での発生が多いです。
またMandibular soft tissue traumaはペルシャなどの短頭種で発生が多いと言われています。
猫の歯科疾患の治療
猫の歯科疾患の治療は原因となる歯の外科的な抜歯が基本です。
内科治療が行われることもありますが、根本的な治療にはなりません。
福岡犬猫歯科&口腔外科での治療方針を内科治療と外科治療に分けてご説明します。
内科治療
内科治療は福岡犬猫歯科&口腔外科では、猫の歯科疾患において第一選択としていません。
内科治療とは抗生物質や消炎鎮痛剤などの薬剤による治療を指します。
内科治療は症状を一時的に抑えることはできますが、単独では根本解決にはなりません。
原因となる歯が存在し続ける限り、痛みや炎症を繰り返すことがほとんどだからです。
ただし歯肉口内炎では、以下のような場合に内科治療を行うことがあります。
- 外科治療を行っても十分な改善が得られない場合
- 外科治療の術前に炎症を抑えたい場合
内科治療の必要性については獣医師による慎重な見極めが大切です。
外科治療
外科治療は猫の歯の病気においてもっとも重要な治療です。
猫の歯科疾患では問題となっている歯を抜歯することで効果的に治療することができます。
これは原因となる歯を抜歯することで口の中の衛生状態が改善するためです。
とくに吸収病巣や歯槽骨炎では抜歯をすることで完治する場合がほとんどです。
ただし猫の歯肉口内炎では奥歯をすべて抜く全臼歯抜歯を行っても、改善したのは約70%だと報告されています。
そのようなときは内科治療の併用を検討することがあります。

まとめ
猫の歯周病は犬と異なり、ほかの猫特有の歯科疾患を伴っている場合が多いです。
猫では歯肉口内炎や吸収病巣、歯槽骨炎といった歯周病とは異なる病気が多く見られます。
これらの病気は抜歯を含む外科治療が重要であり、内科治療は根本的な解決になりません。
猫の歯科疾患は見た目以上に強い痛みを伴っていることが多く、早期の治療が重要です。
福岡犬猫歯科&口腔外科では、犬と猫の歯科・口腔外科の専門的な診療を行っています。
愛猫の歯や口の痛みが気になっている方は、ぜひ提携動物病院までご相談ください。
引用
- Rachel Perry, et al. Periodontal disease in cats. Journal of Feline Medicine and Surgery 17 : 45 – 65, 2015
- Bellows J, et al. 2019 AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats. J Am Anim Hosp Assoc. 2019
- Guy Camy, et al. Proposed guidelines on the management of Feline Chronic Gingivostomatitis (FCGS) syndrome: a consensus statement Consultation Version September 2010
- Soltero-Rivera M, et al. Feline chronic gingivostomatitis current concepts in clinical
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